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完璧主義な男の移住生活は、喋る猫と不思議な少女によって見事に狂わされた――。

祖父が遺した大分県玖珠町の古い平屋。カフェ開業を夢見る陽介だったが、すべてを一人で背負う不器用さゆえに、計画は早々に行き詰まっていた。
そんな彼を孤独から引っ張り(振り回し)出したのは、やたらと偉そうな「喋るキジトラ猫」と、大正時代から抜け出してきたような純粋な案内人・ハル。
予定不調和な日々に戸惑いながらも、陽介は少しずつ「誰かに頼る」温かさを知っていく。だが、惹かれ合う彼女には、この町から決して離れられない“哀しい秘密”があって……。

​全12話

第1話「二つの朝」

玖珠の山々が白く色を変える頃。琥珀のネックレスを胸に、静かな朝を迎える謎めいた女性、ハル。一方、都会の荒波で摩耗し、完璧な「鎧」を纏うことでしか生きられなかった青年、陽介は、祖父の遺した大分県・玖珠町への移住を決意する。交わるはずのなかった二人の時間が、静かに動き出そうとしていた。

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第2話「石垣の上の君主」

玖珠町に移住して半年。カフェ開業の計画に行き詰まり、一人で空回りする陽介。苛立ちを抱えて登った角牟礼城(つのむれじょう)跡で、彼は一匹の誇り高き「殿猫」と出会う。傷だらけでも他者を頼らず、次を見据えるその瞳に、陽介は凝り固まった自分の鎧を少しだけ下ろす決意をするのだった。

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第3話「琥珀色の案内人」

観光案内所で陽介に声をかけてきたのは「ハル」と名乗る古風な女性だった。予定調和を崩されることを嫌う陽介だったが、彼女の胸元で光る琥珀のネックレスと、どこか懐かしい瞳に強く惹きつけられる。気づけば彼は、スマートフォンの電源を落とし、彼女の案内に身を委ねていた。

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第4話「ほどける鎧」

のんびりとしたタクシーの旅、手作りの郷土玩具「きじ車」、そして路地裏の熱々のお好み焼き。上品な佇まいとは裏腹に、お好み焼きを頬張って無邪気に笑うハルの姿に、陽介は玖珠町に来て初めて、心の底からの笑い声を上げていた。彼を縛り付けていた完璧主義の鎧は、すでに完全に脱げ落ちていた。

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第5話「伐株山の風と、黄昏の機関庫」

伐株山の山頂で、空を飛ぶように風を浴びるハル。陽介のモノクロだった世界は、彼女の存在によって鮮やかに色づいていく。しかし夕暮れ時、旧豊後森機関庫に佇む漆黒の蒸気機関車を見つめるハルの横顔には、陽介には到底踏み込めない、透き通るような哀しみが浮かんでいた。

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第6話「手仕事の誓い」

ハルの言葉を胸に、自分の手でカフェの内装を作り始める陽介。ある夜、差し入れのお茶を持ってきてくれたハルに対し、陽介は「一緒にカフェをやってほしい」と心からの想いを伝える。『私でよければ、喜んで』。涙まじりの笑顔で頷く彼女を見て、陽介は確かな幸福を感じていた。

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第7話「殿猫の警告」

カフェの共同経営が決まり、足取り軽く角牟礼城跡を訪れた陽介。しかし、あの「殿猫」は人間の言葉を発し、陽介に冷酷な宣告を突きつける。『あれは、貴様らと同じ時間を生きる者ではない』と。時を同じくして、旧豊後森機関庫にいたハルの身体に、恐ろしい異変が起き始めていた。

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第8話「命の素(こはく)と掟」

けやきの湯の静寂の中、ハルは世界の理(ことわり)を思い出す。案内人として公に尽くすことが、彼女がこの世に存在するための契約。陽介という一人の人間を深く愛してしまった今、彼女を形作る「命の素」の力は失われつつあった。陽介を悲しませないため、ハルは一人、姿を消す決意をする。

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第9話「嵐の旧豊後森機関庫」

ハルからの別れの手紙を見つけた陽介は、嵐の玖珠町を必死に探し回る。彼が向かったのは、かつて彼女が哀しい顔を見せた「旧豊後森機関庫」だった。雨と風が吹き荒れる廃墟の中で、ついに彼女を見つけた陽介。しかし、すでにその身体は半透明に透け、今にも消え去ろうとしていた。

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第10話「奇跡のボルト」

意識を失った陽介は、光の空間でハルと対面する。彼女の正体は、かつてこの町を走った蒸気機関車に残された「一つのボルト」だった。契約を破ってでも陽介を愛したことを後悔していないと微笑み、ハルは光の粒子となって彼を癒やし、完全に消滅する。朝の機関庫で目覚めた陽介の手には、錆びたボルトだけが残されていた。

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第11話「再びの春」

ハルが消えて数年。観光ガイドをしながらカフェの準備を進める陽介の前に、現代的な若い女性「斎藤 旾」が現れる。タクシーの故障により、陽介の軽トラで案内することになった二人。お好み焼き屋で彼女が見せた笑顔と「既視感」に、陽介の胸元に提げたあの錆びたボルトが微かな熱を帯び始める。

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第12話 最終話「スチーム・ロコモーション」

伐株山で草むらに落ちたボルトに旾が触れた瞬間、強烈な琥珀色の光が彼女を包み込む。かつての記憶と愛を取り戻したハルと、絶望の中でも彼女の遺志を守り続けた陽介は、青空の下で強く抱きしめ合う。そして初夏、二人が足りない部分を補い合いながら共に回していくカフェ『スチーム・ロコモーション』が、ついにオープンの日を迎える。

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おまけ

​キャラクターシートなどを公開しています

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